マテリアリティーの特定

企業が取り組むべきサステナビリティーに巡る重要な課題を「マテリアリティー」として特定化することが求められています。しかしながら、自社のマテリアリティーの特定に悩んでいる企業が多いのが実情です。

マテリアティーの特定化は、GRIやSDG などで方法が示されていますし、さまざまな方法で重要度を客観的に数値で把握したりすることもできるようになってきました。しかしながら、これらの取組みを推進する人的資源・財務資源の不足や、これらの方法が必ずしも自社の事業活動全体にぴったり当てはまらないなどの理由により、外部有識者やNPO/NGOからの定性的な情報と、社内の経験則・暗黙知で判断している企業が多いと思います。

一方、投資家が知りたい情報のひとつが、企業が考えるマテリアリティーは何か、それをどのようなプロセスで決定したか、経営陣はそのマテリアリティーの解決にコミットしているかなど、マテリアティーに関する事項です。

これは、マテリアティーは企業の中長期戦略の遂行上の課題なので、マテリアリティーに対する認識不足・取組み不足だと、戦略目標の達成が期待できないからです。企業が考えるマテリアリティーが、ESG調査機関などからのレポートやデータをもとに投資家が推測したものと一致しているか、もし一致していないならば、企業の考えが正しいか、それとも企業が認識不足・取組み不十分で、将来の大きなダウンリスクを抱えているかを見ています。

こうしたことから、企業は、投資家と非財務情報に関わるエンゲージメントを行うことで、NPO/NGOや外部有識者から得る定性的情報を補強することができると思います。

ただし、投資家は、当該企業の事業活動(経済活動)に関しては熟知していますが、環境・社会課題に関しては専門家ではないため、投資家が指摘する課題は表面的なものに留まる可能性があります。一方のNPO/NGOや有識者は、環境・社会問題の専門家ですが、当該企業の事業活動に精通しているとは限らないため、指摘する課題は一般的なものに留まり、当該企業の重要課題として必ずしも的確でない可能性もあります。これら両方の状況を理解してマテリアリティーを検討する必要があると考えます。

また、マテリアティ・マップ分析(縦軸をステークホルダーの関心度・影響度とし、横軸を自社の経営への影響度とした二次元マップ上に各課題をプロットし、優先すべき重要課題を特定する分析手法)において、右下の領域(経営への影響度は大きいが、ステークホルダーの関心度・影響度が低い領域)と、左上の領域(ステークホルダーの関心度・影響度は高いが、経営への影響度が小さい領域)は、実は存在しない可能性があります。株主・投資家というステークホルダーの心理を考えれば、経営への影響が大きい環境・社会課題に関心が低いはずはなく、また、経営への影響が小さい環境・社会課題に関心が高いNPO/NGOは、他社・他セクターの重要なステークホルダーであって、自社に関係のあるステークホルダーではない可能性があります。これらのことから、マテリアリティ・マップ上のプロットは、本来、左下から右上へ伸びる領域に広がるべきものと考えられます。

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こうしたことからも、NPO/NGO・有識者だけでなく、投資家ともエンゲージメントを行い、さまざまな角度から検討してマテリアリティーを特定化することが適切と考えます。


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